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日本女子大学人間社会学部 現代社会学科教授

大沢 真知子氏(おおさわ まちこ)

プロフィール

南イリノイ大学経済学部博士課程修了。 Ph. D(経済学)。シカゴ大学ヒューレット・フェロー、ミシガン大学助教授、亜細亜大学助教授を経て、現在日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授。放送大学客員教授。専門は労働経済学。内閣府の少子化と男女共同参画に関する専門調査会など政府委員を多数務める。主な著書は『経済変化と女子労働』(日本経済評論社、1993)『新しい家族のための経済学』(中央公論新社、1998)『働き方の未来 非典型労働の日米欧比較』(編著、日本労働研究機構、2003)『ワークライフバランス社会へ』(岩波書店、2006)『21世紀の女性と仕事』(日本放送大学教育振興会、2006)




― まずはワーク/ライフバランスの第一人者である大沢教授の24時間をお聞かせ下さい。

とっても不規則で、夜型の生活なんです。正直に言ってしまうと原稿を書いているときは午前 2 時くらいまでやって、 9 時位に起きる感じですね。朝は夫が家事をやってくれますし、家事も二人で分担はしているのですが、それでも大変なときはあります。ほんと細切れの時間を使って原稿を書いていますね。 13 時くらいまで仕事をして、それからスポーツクラブに行きます。犬を飼っているので、 4 時半くらいから散歩に行って、それから食事を作ります。 7 時から 10 時頃まで食事をしたり、テレビを見たり、新聞を読んだりしながら、夫婦で雑談をしたりしています。 10 時から午前 2 時ごろまでが集中して仕事のできる時間帯です。大学の行っているときのスケジュールは別ですが、家で執筆しているときは、大体こんな感じですね。

― 大学に行かれているときは、どのようなスケジュールですか ?

早いときは 7 時か 7 時半に家を出て、授業をして学生に会って、帰ってくるのが夜の 7 時半なので、かなり大変です。この 2 つのスケジュールパターンですね。後は、研究会や会議が不定期で入りますので、かなり不規則になっていますね。私のスケジュールで特徴的なのは、だいたい 2 週間に 1 度くらい群馬の山小屋に行くことかな。犬 2 匹を連れて、金曜日の夜遅くに東京を出て、週末を群馬で過ごして日曜の夜に帰ってきます。

― 素敵な暮らし方ですね。

夫が山好きな人なので、このようなスタイルになりました。これが私のワーク/ライフバランスの秘訣です。犬たちと一緒に 3 時間くらい山歩きすると、一番リフレッシュできます。この時間が私の鍵ですね。東京の生活と離れるので、リセットとリフレッシュの時間が持てます。たまに 3 日間くらいいることがあるのですが、そうすると本当にストレスが発散できるんです。

― このような生活をなさっているからこそ、ワーク/ライフバランスについての本をお書きになることができるんですね。

そうですね。このような生活に慣れるまで少し時間がかかりましたけどね。というのは仕事の道具を置き忘れたり、田舎の生活に慣れていなかったりしたので・・・。でも群馬でも友達ができたし、世界が広がってよかったなあと思うようになりました。山小屋を持ってもう 16 年くらいになりますから。

― 畑とかなさっていらっしゃるんですか?

それはやってなくて、友達が畑を持っているので。私たちは食べるの専門です。新鮮なお野菜とかいただいたりしています。私たちは東京にある美味しいものを持っていったりして。

― この生活を始めようと思われたきっかけは何でしょうか?

日本に帰ってきたのが 87 年でバブル絶頂の時だったので、東京に家を買うなんてとんでもないという感じだったのと、夫かコネティカットの広い場所の出身で田舎生活に魅力を感じる人だっということの 2 点ですね。彼が日本に来るにあたって大きく環境が変わることは、とても辛かったと思うので、私たちにあった日本での生活を考えて田舎の家を探しました。コネティカットは雪が多いので、やはり雪があるところがよかったので、今の所に決めたんです。二人ともスキーが好きなので、冬には滑ります。

国際結婚ではコミュニケーションが鍵になるんですね。育った環境が違うので、一緒に過ごす時間をなるべく作るようにしています。二人で働いていて、二人の時間が少し持てるようになって、夫が育った環境に近いところを探そうということになって、だけど仕事は東京がいいということに落ち着いたので。だから自然に今のような週末に田舎で過ごすというライフスタイルになったということです。

― コミュニケーションがワーク/ライフバランスを形成するための一番大きなポイントのなってくるということでしょうか?

そうですね。夫婦の中で何が大切なのか優先順位をつけるということじゃないでしょうか?最初はまず経済的な自立、その次のステップとして何を考えるのかということだと思います。仕事というものは私たちの人生の一部なので、それを軽んじるということではありませんが、同時に家族に支えられて仕事をしているので、家族がより快適に過ごせる生活を確立していくことが大切だと思います。仕事と家族、両方があって幸せを感じるということがワーク/ライフバランスだと実感しています。そういう働き方は皆さん望んでいることだと思います。ワーク/ライフバランスというと仕事を犠牲にして、ライフをエンジョイするというふうに捉えられがちなんですけど、両立するということは実は相乗効果があるんです。私の実体験でも、山小屋にいるときによいアイデアが浮かぶことが多いですし、本の執筆もしましたしね。

― ワーク/ライフバランスを自ら実践なさっている大沢先生から見て、ワーク/ライフバランスに対する考え方にジェネレーションギャップを感じられことはありませんか?

それは大きいと思います。若い世代は150%力を出して、力尽きた上の世代を見ていますから。上の世代は何もないところから始めて、150%力を出したことが評価されて、結果として昇進したり、給与が上がったりして、結果が出ていましたよね。やっぱり頑張ったかいがあったと感じることができたんですよね。教育でも会社でもどれだけ頑張ったかに評価が依存するような仕組みを作ってきたので、それを壊すのが上の世代は怖いんだと思います。努力したからよかったんだよと繰り返し言われているから、努力しなければ落ちてしまうしかないという恐怖が強いと思います。

― ご自身が忙しくてどうにもならない時は、どのように対処なさっているんでしょうか?

なんとかいろんな人に助けてもらっているという感じですね。犬の散歩とかは馴染みのペット・シッターさんがやっとできたので、お願いしていますし、お掃除も以前はお願いしていました。

― 信頼できる方を見つけるまでに、時間がかかったのではないですか?

そうね。ペット・シッターに関しては、散歩中に出会った方から、情報収集したりして、今の方に出会うまで結構時間がかかりましたね。お掃除は、引っ越した先ですでに利用されていた方から継続したっていう感じです。

― 日本企業がワークライフバランスを推進していく上で、具体的にどんなことを実践していくべきだとお考えでしょうか ?

日本の組織というのは無駄なミーティングの時間とか、効率を考えないで仕事を進めていると思います。まず仕事のやり方を再設計すべきだと思います。その背景には時間効率をあまり意識しない企業文化があるように思います。日本人は時間管理という感覚が希薄だと思います。必要のないミーティングでも慣例だからとか、他もやっているからとかでやっているところが多いですね。皆が1日長くだらだらとオフィスにいるという感じなので、仕事に集中できる時間がないから結局残業になっているのだと思います。仕事を上手くオーガナイズして集中できる時間を作れば、残業しなくていいのにと思いますね。

日本のオフィスは、みんなで同じようなスケジュールで動く仕組みになっていると思うんですね。同じルールがすべての人に当てはまることが、公平なルールになっているけれども、各人のやり方とか特質とかは違うし、責任の重さも違うので、もう少しお互いに認め合うようなやり方がいいですね。違いを認め合えば、それぞれの人の生産性が上がると思います。結局ルールを破ると我儘になってしまうから、違いを認めたルールを創らないとね。そのためにはお互いのコミュニケーションが必要となってきます。

― 企業は今成果主義の部分と、そうでない部分を持っていてそのギャップに悩んでいるような気がするのですが。

同じような仕事をしている人が同じような報酬を貰うのが基本だと思いますね。それが日本の場合は別々で、しかも同じようなグループの中では平等でなければなないという考えがあります。そうではなくて、1つの基準でそれぞれの働き方を許容するという発想に変わらなければならないと思います。ルールを1つにして、透明性がある制度の方が公平だと思います。現在の日本の状況は複雑なルールになっていて、個人のおかれた事情によって、仕事が優先できる人と仕事家庭の両立をしなければならない人と異なった賃金体系が作られているので、それはワーク/ライフバランスを導入する場合にはよくないですね。

もちろん欧米での働く時間の短い人の報酬が違ったり、技能訓練に差が出たりということはありますが、日本ほど賃金体系そのものが違うということはないですね。

― 私たちから見ると欧米のほうが賃金体系に大きな違いがあるのでは、と思いがちなのですが。

そうですね。日本の企業ではパートや派遣社員と社員では、報酬も含め全く違う構造になっています。それが逆に違いを認めるというときには障害になってきますね。つまり正社員のグループの中では実は個人差があって、生産性に違いがあるにもかかわらず、この中ではなるべく同じにしようとして同じ基準が適用されてしまいます。そうするとその中で個人的な違いが認められにくくなってしまいます。だからライフスタイルが画一的になってしまうので、日本の会社員ってあまりハッピーではないような気がします。日本は1つの基準に合わせなきゃいけないプレッシャーが社会だと思いますね。

― 企業は社員がハッピーになれるような制度を模索しているんでしょうか?

そうだと思います。社員がハッピーじゃないと生産性が上がらないし、会社への帰属意識も高かまらなし、結局企業にとって好ましくない状況になります。賃金体系の問題とか、個人の意思があまり反映されない処遇や配置転換、赴任制度などは、もっともっと個人のニーズを汲んで、話し合う土壌を作っていかなければならないと思いますね。個人の事情は様々だから、個人的なことで主張するのは我儘だって日本人は言いがちですが、その個人の事情を受け入れることのできる働き方を実現するのはどうすればいいのかを考えられるようになればいいと思います。

― その考え方をふまえると、日本の福利厚生制度は今後どのようになっていけばよいとお考えでしょうか?

アメリカの福利厚生のように色々なメニューから選べるというのがいいのではないでしょうか?ベビー・シッターが必要な人もいるだろうし、学校に行きたいっていう人もいるだろうし、そういう人たちがそれぞれ違った福利厚生を選べれば、ハッピーですよね。

 



 



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