― まずはフクシマさんの平均的な1日のスケジュールからお伺いしたいのですが。
平均睡眠時間は4時間です。これはコンサルティング会社のベインにいたときからの習慣で、4時間したら目が覚めますね。寝るのが午前2時くらいで6時ごろには起きます。毎日ではありませんが、ブレクファースト・ミーティングにでてから、6、7件のミーティングをこなします。私は基本的に4つの仕事をしています。1つはこの会社のマネジメント、2つ目はサーチ・コンサルタントとしての仕事。後は、95年からやっている本社の取締役としての仕事。年に5回はアメリカに行って取締役会にでます。夜外部での会合が無い時は、全部の仕事をこなして会社を出るのは早いときで10時、遅くなると12時過ぎることもあります。
4つ目は外の仕事。ソニーとベネッセコーポレーションの社外取締役や内閣府や同友会の委員会など外向きの仕事があります。外の仕事は社内ではできませんから、家に帰ってからということになります。例えば、ソニーの監査委員会の仕事をしているのですが、資料もかなりありますし、ミーティング回数も多い、徹夜で資料をひっくり返すということもありますね。
― それでは、オフィスにいらっしゃる時は、ミーティングのスケジュールがびっしり入っていらっしゃるんですね。
そうですね。人とお会いするのが仕事ですから、候補者になってくださるような方とのミーティングが常時入ります。もちろん会社内部のミーティングも入りますから、立て続けにすることも多いですね。ですから基本的に切替がとても大事ですね。
― プライベートの時間が本当に少ないように感じるのですが、生活のバランスをどのようにとっていらっしゃるんでしょうか?
私はミステリーが好きですので、必ず夜寝る前には読んで、自分の世界から他の世界にいくということをするんです。短い時間ですが、これが一番ストレスの解消に役立っていると思います。
ワーク/ライフバランスという観点からお話しすると私のライフというのは、精神的に広がりを持てるようなことを経験するということなんです。よく言えば完璧主義者のところがあり、悪く言えば要領が悪いのか、1つの仕事をしているといつでも満足できず、それに100%時間を使う傾向があるんです。いくつか外の仕事をやっていることによって、逆に精神的なバランスを取っているのかもしれません。たとえば、ソニーは半導体から映画まで作っている会社ですから、その取締役を務めるためには本当に幅広い業種を学ばなければならない。それが楽しいんです。"昨日の私より少しでも賢くなりたい"が私の信条なんですが、日々新しいことを吸収できるのが嬉しいんです。先週は主人とフォーチュン誌のブレーンストーミングに参加したのですが、世界各国の人たちの意見を聞いて、精神的に広がる楽しさを実感してきました。
以前は仕事ができる状況にあるのにしないというのが罪悪感になり、飛行機の中でもどこでも時間さえあれば仕事をしていましたが、55歳を過ぎてから生活の仕方を見直し始めて、今は飛行機の中では必要でなければ仕事はしないようにしています。これは、ベネッセのお手伝いをさせていただくようになって福武会長を拝見していて、人間の豊かさについて考えるようになったのかも知れません。サーチの仕事でクライアントに喜んでいただくのは本当に嬉しいんですが、それだけでは淋しいと思うようになりました。今までは主人の仕事関係の集まりがあっても、あまり参加したことがなかったんですが、この間W杯に招待されてアメリカの出張から日本に帰らずに、ドイツで主人と合流してゲームを観戦しました。以前なら日本にトンボ帰りでしたが、今回は、こんな時間もあってもよいと思いました。こうした会合も私の仕事では、クライアント開拓の機会になりますので。日本は負けちゃいましたけど。
― 本当にハードなスケジュールですが、健康管理はどうなさっているのですか?
私の睡眠サイクルが4時間らしいので、6時間くらい寝るとかえって調子が悪くなったりするので、結局4時間になってしまうんです。食事もほとんど外でいただきますし、健康に産んでくれた両親に感謝ですね。でも、最近は海外出張の後など疲れたと感じるようになったので、少し生活を変えようと思っています。
― 今後フクシマさんはご自分のプライベートをどのように広げようと思っていらっしゃいますか?
まずは運動とダイエット。ほとんど毎食会食で、ストレスもありますし、最悪のパターンですね。まずはここからですね。1月に引越しをしたのですが、まだ片付いていない段ボール箱があって、これが片付いたら、お掃除とかを外部にお願いしようとも思っています。
それとフランクフルトの美術館で久しぶりに絵を見て、素晴らしい絵に囲まれるような時間が貴重だなと。少しずつこのような時間を持とうと思います。
― 日本と海外の企業では時間に対する考え方に違いがあるのではと感じるのですが、どのようにお感じになりますか?
日本の時間の正確さや形を大事にするという部分は決して悪いことではなく、大切だと思います。それは相手のことを尊重する思いやりがあるということですから。ただ、集中的に作業するということに関しては違いがあると思います。日本ではチームで判断しますから、調整に時間を使います。長時間働いているといっても、余裕がある。それは仕事の定義の仕方が日本と海外とでは違うからだと思います。どこにアカウンタビリティー(責任)をおくかですよね。よく候補者の方に、ある仕事に関してここまでの成果を上げて欲しいという期待があっての契約関係ですから、3ヶ月でなんらかの成果を上げたほうがいいですよと説明します。いくら長時間作業をしても結果が出なければ評価されません。上司に相談しても、それはあなたが考えることと言われる。個人の責任で判断しなければならない。高度成長の時期には、強みであった資質が現在のグローバルな企業経営の中では、弱みになり兼ねない。その一例が、自分で責任を持って、判断することです。
― ご自身で体験されたことに基づいてお話してくださるので、とても素直に共感できますね。
コンサルタントという仕事は、内部の気づかないことを、外部の視点から客観的に見たらどう見えるかを分析することで付加価値をだすことですが、体験していない立場で言わざるをえないのは、自分で納得できないこともありました。ですから、できるだけ自分の体験からお話をしたいなと思っています。情報の整理の仕方は学べることですが、責任をもてる自分の結論は、それを自分の体験に照らして考えることでしか出てきませんから。
― 日本では、ワーク/ライフバランスと関連して女性管理職の登用や少子高齢化などが大きく取り上げられていますが、それに関してどうお考えですか?
私は女性と男性の区別は、個人の個性のひとつだと思っています。職場に限っていえば、優秀な人とそうでない人がいる。私の経験上そこには男女の差はありません。管理職の登用に関しても適材適所で配置したら、女性だったということにならない限り、本当の意味での活用にはなりません。女性の活用をどうするかと悩んでいる余裕は日本企業にはないと思います。少子高齢化の社会では、女性の活用は必須です。外国人や高齢者の活用もそそうですが、そうしないと日本の社会はもたない。選択の余地はありません。
そして、女性が「産む性である」という生物学的な特性から不利にならないようなシステムを作ることが必要です。そのためには女性にも早い時期から男性と同じ職務経験積ませることです。個人の資質には「専門的資質」と「個人的資質」があります。専門的資質の中には職務経験と経験からくるスキルがあり、経験がないかぎりスキルは育ちません。専門的資質を身につけた優秀な女性が増えれば、企業としても女性が働き易いシステムを整備せざるをえないと思います。ワーク/ライフバランスというのは、結局個人の望むライフスタイルが実現していくということではないでしょうか。ですから、女性が子育てをしながら家で仕事をするとか、男性が子育てやハウス・ハズバンドをするなど様々な選択肢がある企業社会となることが大切なんだと思いますね。